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時は神なり

  • 1月29日
  • 読了時間: 4分

年末になると、普段はあまり顔を出せないOB・OGさんが、ひょっこりと現れてくれる。昨年の忘年会では、こんなひとこまがあった。


久しぶりに3名のOBが顔を出してくれた。

金曜日のOB・OG会では、なかなか日時が合わず、いつもすれ違っていた3名だった。

忘年会は、目玉企画であるオセロ大会が佳境を迎えていたが、3名は遅れて入ってきたため、大会には残念ながら不参加。

僕を含めて片隅で四方山話をしていたが、次第に会話がほぐれていき、これまでの出来事をお互いに振り返るような展開となった。

そこでオセロ大会をしていたフロアーから少し離れ、火鉢があるいくぶん静かな休憩室に移り、そこでじっくりと話し込むことにした。

ちなみに風の丘は、冬になると火鉢が登場する。

火には、人の心をなめらかにさせる不思議な力がある。


三人(Aさん、Bさん、Cさん)とはもう、10年以上のお付き合いだが、こんなふうに時間に縛られず話すことができたのは、初めてだった。


Aさんが言う。

“最近、障害者雇用で働き始めた方がいて、その方とこの前いろいろと話したけど、ずいぶん違うなとー思いましたね。彼はいま作業時間が短いけれど、今後もあまり延ばすことはかんがえていない、と言うんだ。いやー、私なんか、もう一日でも早くフルタイムにしたくて、仕方なかったけれどな。”

“自分もそうでしたよ”と、Bさん。“経済的に苦しいこともあったけど、それ以上に、フルタイムで働けるようにならないと、周囲の人から認めてもらえないし、正社員にはまずなれないし。いつも焦ってたな。”

“そうそう、誰に言われたわけではないけど、なんかそんな気がして、いつも焦っていた”と、Aさんが相槌を打つ。

“僕はフルタイムで一度失敗しているんで、それはないけど…”と、Cさん。“でもやっぱり、なるべく長い時間働きたいとは思っている。お金のこともあるけど、なんていうか、時間を長くできれば、それだけ病気(精神疾患)になる前のコンデションに戻ってきた、みたいな気持ちになるから”。


僕がこんなふうに尋ねてみた。

“でもさ、たいがいみんなが仕事時間を長くしたいと相談に来たときは、こちらはいったん止め役になるわけだよね。じゃあ、いまのコンデションや生活状況を冷静に踏まえて、答えを探しましょうよ、と。皆さんからすると、冷や水を浴びせられたような感じになるでしょう?”

“それは、まあ、そう言ってくるだろう、というのは想定の範囲内ですよ。立場上、そうなんだろうなって”とAさんが笑うと、Bさん、Cさんも笑いながら頷く。

“でもね、本音を言えば、自分がもしもみなさんと同じ立場なら、絶対同じことを思うなって。痛いほどその気持ちはわかるのね。ただそこは自分の考えと専門職としての見解は分けなければならないから、あえてそう言わなければならないんであって”と僕が言うと、

“それは、もうわかってますって。”

Bさんが笑う。


するとCさんが、じつに興味深いことを話し出した。

“うーんと、だから…。たぶんこっちのことを心配してくれているんだろうな、とわかるからこそ、つい、けっこう強い口調で言い返せちゃうというか。”

Cさんとはかつて、仕事時間を延ばすことをめぐって、かなりの口論となったことがあった。いまの仕事量でも体力的に辛そうなのに、さらに時間を増やそうとしている。

僕に対して感情的な反発とも思えるやりとりもあったので、もしかしたら契約を終えたいと切り出されることも、半ば覚悟していた。


“Cさんとは、そう言えば、けっこうな言い合いになったよね、(作業)時間のことで。いったんは、もうこれで契約終了、と言われても仕方ないとも思ったし。”と、僕。

“ああ、あのときね…。でも、契約を終えるとかは、なかったな、たぶん。やっぱり、自分のことを心配してくれているんだというのがわかるから、僕も言い返せるんで。それがない人(自分への心配がない人)には、ぎゃくに何も言う気にならないし。”

“そういうものなんだ…。こっちは、これでもう終わりかなと。わからないもんだな…”と僕が少し天を仰いでいると、Aさんがすかさず、言った。


“やっぱりこういうことを話せるようになるのって、時間が必要なんですよ。私だってもう○○さん(僕の名前)とは10年以上の付き合いになるし…”。

“俺は20年近くだよ(笑)”とBさんが言うと、

“僕は十数年くらいかな。付き合いは長いけど、こんなことを話したの、今回が初めてですよ”とCさん。


「時は神なり」。

時間の中に顕われ出る真実を、静かに待つということ。

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