就労移行支援では、最低年4回個別支援計画を作成することが義務付けられている。
「最低」と表現したのは、最低でも3ヶ月ごとに作成するということで、例えば利用時間が変更になったり、職場体験実習やトライアル雇用などがあるときは、そのつど状況に応じて個別支援計画が必要になるということ。
就労移行支援の個別支援計画は、あくまでも利用者さんが就労へと至るための計画なので、そこにはもちろん「目標」というものが必要となる。
ここで改めてかんがえてみたいのが、この「目標」というヤツである。
就労支援での支援計画では、目標はもちろん「就労する」ということになる。
就労するための支援事業所を利用されているのだから、これは当然のこと。
だから利用者の皆さんが、方法はいろいろとあるんだろうけど、就労という目標に向かって一直線に進んでいけるようにすることが、ぼくたち支援員の役目だと思っていた。
だからいつだって、支援者も利用者さんも、つねに目標を念頭に置いて活動をすることが大切なことなんだと、信じて疑わなかった。
そうなのかなぁ…と、思い始めたのが、もうかれこれ10年前くらい。
利用者さんたちは、これまで十分すぎるほど、世間から「働かざる者食うべからず」的なプレッシャーに煽られてきて、それで今度は就労支援事業所で「目標」という名の、さらなるプレッシャーに煽られる。
しかも支援計画上の「目標」は、自分でも納得しているという体裁をとっているから(サインもいただくことになっているしね)、なおさら始末が悪い。
細かなことはここでは省くけど、これまでの就労支援の経験の中で、自分なりになんとなく顕在化してきた、就労支援のテーゼめいたことがいくつかある。
そのひとつが、“もしかしたら仕事ができなくても、自分は自分なりに生きていけるのかな、という安心感みたいなものが、逆説的に就労への意欲(本当は「志向性」と言いたい)を芽吹かせる”ということ。
そのためにはいったん「働かざる者食うべからず」的な観念を頭から外して、自分がどこから来て、どこへ行こうとしているのかを、じっくりとかんがえていただくことが大切となる。
その流れの中から、自分がしたいこと、したかったと感じていたことを、改めてを見つめていただく。
國分功一郎さん的な表現をお借りすれば、欲望形成支援的な関わりというということになるのかもしれない。
―うーん、そんなことが就労につながるのかね?
それが仕事につながるかどうかは、とりあえず横に置いておこうよ。
―おいおい、そこは就労支援の事業所じゃないのかい?
―就労という「目標」はどこにいったんだい?
そうだね…。
あくまでも、目標は、そこはかとなく…。